The Stairs 「Right In The Back Of Your Mind」

hidizo2006-09-04



92年というご時世にモノラル録音のフル・アルバム、その名も「メキシカンR&B」(馬鹿なタイトルだ)をたった一枚残して消えていったリバプール出身のバンド、ザ・ステアーズを覚えているだろうか。
そのザ・ステアーズのフロントマン、エドガー・ジョーンズは地道に活動中なんだけれど、どういう訳かこのタイミングでザ・ステアーズのレア・トラック集が登場した。
全く唐突だわな。

内容としては結成直後のベッドルーム・デモやライブ、幻のセカンドアルバム向けのデモ、更には93年の解散直前のデモまでが収められている。音質はまちまちだけど、聴けないぐらい酷いのは無いように思う。
さっきも書きましたようにアルバムの原盤ミックスをモノラルに要求するような御仁だけに、その偏屈なまでのこだわりはこのレア・トラック集でも存分によく判る。
というか、あの当時おマンチェなどもあってサイケだ何だという言葉がよく飛び交っていましたが、本当に本物のサイケを体現してたのは彼だけだったんだな、という事実を改めて思い知る。


回顧主義や興味本位ではない、100%本気のサイケ/ビートバンドへの傾倒。デモだろうが劣悪な音質のライブだろうが、その志は不変。
ジョーンズはあのゴリゴリの音質のベースをウネウネ引き倒し、ミック・ジャガー的でありながらジャガー以上に黒くて粘っこくしつこいヴォーカルをがなり倒す。間違いなく、60年代当時のサイケR&Bバンドと対バンしても全く見劣りしないしつこさ。そしてMC5的な凶暴で黒い質感を両立してるのも特異だ。
今でも全く古びていない格好良さ。凄いとしかいいようがない。

同時期の同じ出身地にはあのザ・ラーズがいるけど、彼らはもっとソング・オリエンテッドで、曲もどこか青くて可愛らしいのに、ステアーズは無骨で可愛気が無い、黒光りする本格派だったわけです。


で、何より感動するのが、ベスト・トラックはバンドが解散する直前に吹き込まれた"What Has Gone Wrong With This World"だということだろう。勢いと活力に満ちた、ひたすら鋭角的に登り詰めていくハードなナンバー。最期まで、バンドと彼は成長し続けてたんだなというのがよく判る。
これが日本盤のみのボーナス・トラックでしか聴けないのは勿体ない。

ジョーンズ本人の解説の対訳と歌詞も完備。日本に居る幸せを確認するためにも、日本盤を是非。


http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000G7P7V4/goodasgoldstu-22