V.A.「Love That Louie 〜 The Louie Louie Files」

hidizo2005-12-08



ガレージの聖典「ルイ・ルイ」が色々な人のヴァージョンで11曲続く馬鹿の極みのような1枚、「Louie Louie Collection」を発見して悦に入っていた。
あの単調なメロディが延々続くわけで....、
その無意味さは実に痺れるものがあったり無かったり。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000001C08/goodasgoldstu-22)。


しかし、上には上が居る。
さらなる猛者がコイツ。集めも集めたり24曲。
しかし。これは単なる馬鹿CDじゃなかった。
『ルイ・ルイ』の全てを多面的に教えてくれる構成だ。


全部で8章に分かれている。

まず第1章がリチャード・ベリー&ザ・ファラオスによる「オリジナル」。キングスメンじゃないんだな。それすら知らなかったよおれ。これが案外上品な、コーラスを多用したドゥー・ワップみたいなサウンド。誰がここからこの楽曲のたどる長い旅を想像できよう。その呑気さがなんか胸を打つ。

で、続いて「『ルイルイ』に影響を与えた曲」が3つ。ここからパクったとしか言いようがないラテンもの。成る程と納得するカントリーっぽいヤツ。そしてチャック・ベリーの「ハヴァナ・ムーン」は、次のガレージにつながっていくことを痛感させてくれ、だんだん「ルイ・ルイ」に聞こえてくるのが凄い。目から鱗だ。


で、ここから怒濤の「ルイルウィ〜、オ〜オ」が並ぶのだが、これがヒネリが効いてる。

まず「北西のルイルイ」。北西部のガレージ版、我々が思う正調ルイルイですな。徐々にヤサぐれたアレンジになっていく曲順が見事。勿論キングスメン、そしてヌルくて喧しいパーティ乗りのポール・リヴィア、最後は極めつけで最高に気合いの入ったソニックス。計6組。いわばトロから頂くようなもんです。
続いて「人生としてのルイルイ」。なんじゃそりゃ、って感じですが、ガレージじゃない変わったアレンジのが5曲。音楽的にはここが一番面白い。もう一回オリジナルに戻したようで妙なビーチ・ボーイズ、イナたくて熱いオーティス・レディング、死人が水面でゆらゆら揺れてるようで気持ち悪いサンド・パイパーズ。で、このアルバム中最強のヴァージョンと言えるガレージ・ソウル風のスワンプ・ラッツ。死ぬ。格好良すぎだ。是非貴方も死んでくれ。

続いて「海を渡ったルイルイ」が2曲。イギリスものです。
サウンズ・オーケストラの、よく言えば「ジュ・テーム...」風、悪く言うと(っていうか圧倒的にこっちの印象なんだが)リチャード・クレイダーマンみたいな間抜けにスカしたアレンジのもさることながら、キンクスが入ってるのが悪意としか思えない。茹ですぎた豆腐みたいなグズグズのダサいルイルイから、最高にクールな「ユー・リアリー・ガット・ミー」が生まれたわけですからね。
このCD、イギリスのレーベルACEのリリースなんだけどな。自国を自虐的に落とすかねえ。


次もひねってる。「改変ルイルイ」ってことで、「ルイルイ」をチョイといじって自作にしてしまった図々しい4曲。デッドコピー故の情けないB級感に苦笑するね。キングスメンも凄ッげえ適当。
その次は「続編ルイルイ」が2曲。1曲がリチャード・ベリー自身による「ハヴ・ラヴ・ウィル・トラヴェル」という正統的な続編。そんなもん有ったんだ。有っても別になあ。もう1曲はポール・リヴィアたちによる「ルイ・ゴー・ホーム」というストーリー的につながってる奴。
最終章は1曲。「ルイ・ゴーズ・ホーム」という名の下に、トゥーツ&メイタルズによる「ルイ・ルイ」が登場。70年代のトゥーツは格好いいな。ソウルとレゲエの架け橋になった人だけある。


読むのが嫌になるほど微細に書き込まれ、関係者へのインタビューや、バンドやシングルの写真がこれでもかと載せられた豪華なブックレット、そして丁寧なリマスタリングで抜群にヌケが良く仕上がっている音質(特に50年代物の音の良さにはビビる)など、仕事は鬼のように丁寧。
編者の「ルイ・ルイ」へのよく解らない愛情の爆発ぶりは純粋芸術のようですらある。学ぶことが多い一枚。


http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000067A5I/goodasgoldstu-22