BROKEN SOCIAL SCENE 「BROKEN SOCIAL SCENE」

hidizo2005-10-05



遂に出た。出てしまいました。待ちこがれたアルバム。
今までとは桁違いの注目度の中、見事な作品を作ってきた。バンド名を冠したのも、代表作であることへの自信の表れってやつでしょう。

彼らはカナダのバンド...、というより不定形の集団で、と説明するべきだろう。
本作でメンバーとしてクレジットされているのは17人。スターズや、女性シンガー・ソングライターのファイスト等々、カナダのインディー・シーンの人材が出たり入ったり。ライブでもレコーディングでも、「参加できる人が参加する」というユルい結束の元に成り立つ。いわば近年活況を呈してきたカナダのインディー・シーンのスーパー・グループ。一昨年発表の前のオリジナルアルバム「YOU FORGOT IT IN PEOPLE」の時とは注目度も状況も全く違うわけです。


基本的にはナイーブな歌もの、といっていいかもしれない。ルー・バーロウ等を思わせる鼻歌っぽい良いメロディが満載。特に本作は今まで以上に曲がいい。

このバンドを定義づけているのは歌より演奏だ。軸になるメロディを演奏する数名がいて、それ以外の多数が色々な装飾を乗せていく。それはホーンだったりギターだったりマリンバだったりタンバリンだったりストリングスだったり歌だったり。あらゆる楽器が自在に鳴り沢山のメロディが絡み合う。それは奔放なようで、細やかな神経が行き届いているようにも感じられる。有機的でサイケデリック。懐かしいようで新しい。

それが「ここぞ」という時に一気に収束し、ドラマチックかつ雄大に爆発する。
その瞬間の美しさたるや。
劇的で「溜めて爆発」な構成は、シューゲイザーとかシガーロス的だが、ノイズや混沌でホワイトアウトさせるようなあの陶酔感・緊張感とはやっぱりちがう。大らかさでアッパーで自由で骨太で逞しい。 敢えて言うなら、自在さと統率の雰囲気は渋さ知らズ、でしょうか。活動形態でもちょっと近いところがあるし。
5月の来日時の高揚感に満ちた素晴らしいライブも、そんな印象だった。


なお先ほど「基本的に」と書いたのは音楽的にも多層的だからだ。深いリバーブのかかったピアノと打ち込みのリズムが揺れる音響っぽいもの。ロックンロールっぽい明快さをもつアッパーな曲。ノイ!のようなリズムを打ちながら盛り上がっていく曲。オアシスかガイデッド・バイ・ヴォイセズ的かとも思える「ビッグなロック」。コラージュっぽい曲。何故かプリファブ・スプラウトを思い出すようなメロウな曲など。
結局「誰が参加するか」で音楽性がころころ変わる。
奔放でとっちらかっているが、「多層的でぐっちゃり」という音像の個性、常に訪れる過剰な高揚感のおかげで、見事に統一感がある。


全14曲に、初回盤には7曲入りepがセット。特盛り21曲96分!! 駄曲が一切ないあたりに現在の彼らのテンションの高さが感じられる。壮大で大らかで美しく楽しくもある。
何度聞いても新しい発見がある。間違いなく今年屈指の大感動の名盤です!


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