Enemy Hogs ('99)

hidizo2005-11-02




驚愕である。
2年もあれば人間色々なことが起こるのも自明だが、それにしてもデビュー作と本作の間にある変化は余りにも大きい。
いきなり、初期の代表作と言ってもいい、
圧倒的な完成度と破壊力を誇るサウンドを手に入れてしまった。


ここで彼らは4人編成になる。
ゲストを殆ど入れなかったためか、バンドとしての個性や集中力がかっちり固まった感がある。また、彼らのサウンド上のキーとなる喧しいオルガンがフィーチャーされ、彼らの個性を形づける上で欠かせないタイプの楽曲が登場する。


1曲目は前作のロウ・ファイ乗りの不安感を漂わせるロックだが、執拗に繰り返されるオルガンのリフと不気味なノイズ、手数の多いドラムのベクトルがバッチリ定まっていて、前作にみられた散漫さとは雲泥の凝縮力をいきなり見せつける。


そしてM2。カクカクした忙しないリズムで疾走するベースと歪んだオルガンが隙間無く壁を作り、ノイズが上塗りされる。そこにJマスキス的な脱力ヴォーカルがハイ/ロウのオクターヴ・ヴォーカルで忙しないメロディを乗せていく。時折ハンド・クラップが耳に付く間抜けな展開部を挟み、何もなかったように元に戻る。
展開が少ないのにスリル満点、ノーウエイブとジャーマンロックを掛け合わせたような彼らのトレードマークとも言える「カクカクした楽曲」が登場する。この後の彼らのアルバムで頻繁に登場するタイプの楽曲。アレアにとっての「ヴァルカン半島リズム」の曲と似たような位置づけと言えるだろうか。
この衝撃的で喧しいカウンターパンチで、一気に持って行かれる。


それ以降も、反復という通底する要素を含みつつ、高速/ミドル/重く遅い曲など様々なタイプの曲が登場していく。
曲そのものの出来がかなり良くなり、既に個性が完成の領域に近づいている感がある。ストリングスと少年合唱団を使ったM7など、一々仕掛けた実験の数々が実を結んでいるのが痛快だ。エンディングに控えた、無軌道に点描していくような8分もの長尺曲ですら、散漫さが無い。

「やりたいこと」を「体現させる」術を身につけた勢いや、尋常じゃないテンションが心地良い。
いわば、このアルバムこそが現在の彼らの個性を形作る上で欠かせない、起点となる作品だと言えるだろう。



1.Whitey Fortress
2.Primanti Bros.
3.Bombay Fraud
4.Give up... And Move On
5.Little Red Dolls
6.Ginger (Bein' Free)
7.Turn It: Up (Loud)
8.Gettin' It On
9.Hard Workin' Man
10.Quest for Two
11.Fourth Eye
12.Wicked Servant


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