The Wedding (2005)

hidizo2005-11-10




最新作。そして、間違いなく最高傑作である。


最大の特色は、ファーストを除いて、ゲストを最小限に抑えてきたのに対し、ゲストミュージシャンを多数招いていること。
特に、いきなりアルバムの冒頭からチェロのゴリゴリしたリフと共に登場する弦楽四重奏団には驚かされる。和声は現代音楽的。バン・ダイク・パークス的なこのイントロで、既に胸が高鳴る。ヴォーカルがゆったり漂ってくる。どこかヒリヒリ引っかかりつつ、妙に心地よい。
この弦楽団、メロディを補完するために全体を包み込むような、分かり易い使い方は殆どされておらず、彼らが参加した6曲は全て曲のキャラクターが異なり、その中で実に「立った」役割を与えられている。自然に、本作のキモになっている。


2曲目にトレードマークだったノーウエイブ・ジャズ風カクカク高速ハードコアが来る。随分空間を意識したような作りで、ROVOの名曲「LARVA」を思い出したりもする高揚感がある。しかし、カクカクものは、ここで打ち止め。
続いて東洋的な歌メロと重いグルーヴ、ファズギターが幾重にも重なる、いかにもアメリカ的なサイケもののM3。
スペイン風〜中世ヨーロッパ臭いギターと子守歌風のメロディとリズムボックス、そしてファズ・ギター・ソロという取り合わせが妙なM4。
チープで可愛らしい電子音をバックに牧歌的な歌が乗るイントロから、セカンド・ライン的なドラムを皮切りに、ストリングスやギターが重なってくる、感動的な展開のM5。
ヘヴィなギターと荒れるヴォーカルというハード・ロックな前半が、いきなりまるっきり関係ない不可解なギターとオルガンとスティックを叩く反復に変わり、ハイハットの音共にぶっつり切れてしまうM6。
パルスっぽいリフとコーラスで重く荘厳に仕上げた前半に、ストリングスが乗ってきてドラマチックに躍動するM7。
オルガンの多重録音とストリングスが奇妙な緊張感と不安感を煽るパートが穏やかな歌物を挟む構成になっているM8。
ジャズっぽいドラムとストリングスが中心で、歌がなければ映画のスコアのようなM9。
スケールの大きいリフと点々と鳴っているピアノの背後から、ノイズが押し寄せてきて、最後はすとんと切れてしまう終わり方が衝撃的なM10。
リズムボックスとダークな歌が、初期キュアーあたりのニューウエイブ的な異質感を呼ぶM11。
「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」のような雰囲気ながら、曲名通りの明日への不安を喚起、後半で入ってくる不吉な感じの歌が、大河のようなスケールでうねっていくM12。
カントリー/フォーク的なギターと歌が彷徨う子守歌のようなもの悲しさ、見事なハーモニーとストリングスで包まれる開放感、の2つのパートで、エンド・クレジットでも立ち上がってくるような不思議なスケールで終わっていくM13。


つい全曲の内容を書き出してしまったが、被るタイプの曲がなく、完成度も高い。
総じて、形容しづらい奇妙にゆらゆらしたサイケな独自性が立ち上がってきた。疾走感はかなり押さえ込まれた感もあるが、今まで以上にメロウなメロディをもつ歌ものの色が強くなった。決して器用でもないし巧くもない歌ではあるが、その緩さが、かなりシビアかつ機械的にすらなる演奏の中でいい緩衝材になっている。このように、メロディに限らず、構成や音の選び方など、曲自体かなり練り込んだ感がある。


前作の時点ではこの人達の記名的な持ち味だったカクカクした疾走感を求めるが余り、どうかなあ、と思うことも多かった新機軸が、全てハマった感じがする。
これは前作をもう一度聞かざるを得まい。という気にさせた時点で彼らの勝利。確実に前作で求めていた実験が、花開いた感がある。単に「やってみました」レベルじゃなく、きっちり聴かせるところまで積み上げた集中力が感じられるのだ。


そして、強いスタイルをもっていたにもかかわらず、それを超えるような新しさを求めた姿勢に感服したくなる。
繰り返すが、間違いなく最高傑作


1.Eiger
2.Lavender
3.Spirits
4.Run Through My Hair
5.High Life
6.Did I Die
7.You're Drifting
8.Charlemagne
9.Know
10.Heavenly Choir
11.Leaves
12.Beginning Is Nigh
13.August Morning Haze


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