Keef Hartrey Band 「OVERDOG」

hidizo2005-11-25



キーフ・ハートレイの自伝「ブリックヤード・ブルース」は、滅茶苦茶面白いイギリスの60年代の音楽界の回想録だ。
アート・ウッズ〜ジョン・メイオース・ブルーズ・ブレイカーズ〜グレアム・ボンド〜キーフ・ハートレイ・バンドという、当時の英国ブルーズ・シーンのド真ん中でドラムスを担当、音も映像も残っていないがキーフ・ハートレイ・バンドではウッドストックに立つ。
そんな英国ロックの生き証人の人生をイアン・サウスワースという同郷のレコード屋店主が聞きまとめ中山義雄さんが殿山泰司風のべらんめい口調で翻訳している。

ブルーズにのめり込んでいく高揚感、リンゴ・スターの後釜でロリー・ストーム&ハリケーンズに加入、いかがわしいハンブルグでの修行、男気溢れるジョン・メイオール、勝手すぎるピーター・グリーン、魔人と凡人の間を行き来するジミヘン、同じアパートをシェアしてたミック・テイラーがいきなりストーンズに入る驚きなどなど。青春だね。全てのエピソードが面白すぎるし、荒っぽくて頑固で合理的で、口やかましく人情にも厚い彼のキャラクターが最高だ。
本当に「出してくれてありがとう」という気分で一杯の一冊。
レコード・コレクターズ」誌のピーター・バラカンさんの連載と合わせると余計に面白い。
片やロンドンのミドル・クラス。片やプレストンのワーキング・クラス。同じ時代を見ててもこうも違うものか、と思う。二人とも「ツェッペリンはどこが良いのか解らん」ことについては同意見でした。

その本についてはこちら。

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で、その彼が70年代初頭に主導権を握ったバンドがその名もキーフ・ハートレイ・バンド。
どんな音かというと当時のブルーズ・ロックの命題である「如何にブルーズ以外の要素を入れつつブルーズとして聴かせるか」をひねった結果、と言えるでしょう。
ご紹介するのは4枚目の「OVERDOG」。


ホーン・セクションを入れて、うねりまくるベースと乾いたドラムを軸にしたファンキーなリズム隊、ハード・ロックほどではないにせよギターは重めに設定、構成もちょい凝り気味にする。ドライヴ感満点のブルーズ・ロック・ジャズ風味。
ジョン・ハイズマンからジャズを抜いてキース・ムーン的な喧しさを足したようなキレも抜群の御大のドラムは格好いい。そして、バンドのフロントで奮闘するミラー・アンダーソンのコクのある歌が最高に格好いい。楽曲も粒ぞろいで、古典的なブルーズの先を目指す勢いが充満しているのが熱い。元ジェスロ・タルのミック・エイブラハムが率いたブロドウィン・ピッグとの共通項を感じる。あれよりアッパーな感じかな。


71年という時代を思えば結構モダンな音でびっくりである。頑固なだけじゃないんだな。


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