MADNESS 「DANGERMAN SESSIONS vol.1」

hidizo2005-11-28



ほぼ同格の存在で、ヒーロー的な格好良さを持つ人たちと、芸人魂全開でウケ狙いに全てを賭ける人たち。たとえばクラッシュとダムドとか、エルヴィス・プレスリートム・ジョーンズ...だったら、圧倒的に後者に惚れ込んでしまう傾向がある。
大概ヒーローは早死にするし解散したまま。芸人は再結成をしぶとく繰り返したり、なかなか死ななかったりする。ヒーローは死して人々に敬意を残すが、芸人は「未だやってるよ」と笑われ続ける。強引な比較ですが。


で、スペシャルズとマッドネスというのもそういう関係じゃないか。スペシャルズも再結成的なことはあるけど微妙に名前を変えていたりする。が、マッドネスはのうのうと昔の名前で出ている。
確かにスペシャルズは本当に格好いい。ソリッドだし、青春の臭いが濃厚だし、社会に対する問題意識や着眼点も見事、なにより怒りを創造に変えるパワーが素晴らしい。
でもさあ。それにしても軽視されすぎじゃないですかねマッドネス。乾いた馬鹿騒ぎ中心主義とか、パブ・ロック風味を引き継ぐ微妙な台無し感とか、単なる馬鹿では体現できない馬鹿馬鹿しさとか。大都会ロンドンの下町で生まれ育ったニクイ奴にしか出来ない軽さ。素晴らしいじゃないか。なんでシリアスじゃないとダメなのかな。
数年前、スカパンクが流行ったときも、皆スペシャルズばっかり持ち上げてさあ。昨今のニューウエイヴ・リバイバルでもスペシャルズが誉められるケースばっかり。
そんなわけで、日本では期待してる人少ないでしょ新作が出ても。


で、そのマッドネスの新作。愛聴してます勿論。
全曲カバー。
これが、プリンス・バスターとかロード・タマノ等のスカへの愛と、キンクスの「ローラ」とかシュープリームスの「キープ・ミー・ハンギング・オン」、ホセ・フェリシアーノの「レイン」等のウケ狙いが、絶妙に入り交じった素晴らしい選曲なんですよ。
ライナーのコメントも泣けるしなあ。スカのカバーもルーツを見せびらかすようなスノッブさとは無縁で、アレンジはまんまナッティなマッドネス風味。目新しさはないんだけど、あの楽しさで全編が埋め尽くされているだけで多幸感満開です。特に「キープ・ミー・ハンギング・オン」と「ローラ」の軽さが堪らない。
この大衆性。相変わらず訛ってる歌。何も変わらない。弾切れって感じも商業主義って感じもしないしなあ。あくまでそこにあるのはおもてなしの心。

で、芸人さんの何がいけないわけで?そういう業を選んだ男達の生き様がここに。

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