Tom Jones「Coast to Coast」「Do ya think I'm sexy」

hidizo2006-01-03



とにかくトムが歌えばいい。
それで万事丸く収まるトム・ジョーンズ原理主義において、全ての歌は等しくトムに歌われる権利と義務を有しているのはいうまでもない。
つまらない曲でも盛り上がりに欠ける曲でも、トムが歌えば全てその瞬間から脂っ気とソウルてんこ盛りの下世話で血湧き肉躍る愉快な音塊となって我々に降ってくる。
とにかく何でもいいからトムに歌わせたい。トム・ジョーンズ・シングス・フリッパーズ・ギター、トム&JOJO(「みんな死んでしまえばいいのに!!」)、「モテたくて」フィーチャリング・トム・ジョーンズトム・ジョーンズ・プロデュースド・バイ・エンヤ(多重録音が全部トムの声)...、どんなにナヨナヨしたものだろうが上品ぶっていようが、何にでもマヨネーズをぶっかけて食すような豪快な味覚、それがトム流の料理法である。

そんな我々にとって必須なのが、トムがテレビショーで歌いまくっていたライブ音源を寄せ集めた「Coast to Coast」である。
とにかく、リンクに飛んで曲目を観ていただきたい。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00000JAHD/goodasgoldstu-22
どの口で「なすがまま」って言ってるのか判らない傍若無人な「レット・イット・ビー」とか、予想通り素晴らしい「アイ・キャント・ターン・ユー・ルーズ」「プラウド・メアリー」もあるが、ただでさえ下世話&お下品な原曲を1000%ビルド・アップしてしまった「アイム・セクシー」の激越な名唱は、夜うなされるほどのインパクトである。
闇鍋の如きいい加減な選曲、ヌルく酷いバンドの演奏にもかかわらず、トムのフィル・アンセルモ1000人に匹敵する脂力が強引に聴くべき価値のある音楽に変換してしまう。
これぞ一家に一枚。どんなに人生が辛くとも、聴く麻薬であるトムのモリモリの脂っこい絶唱なら何とかしてくれる。

で、更に恐ろしいものを入手してしまった。
トムのリミックス・アルバム「Do ya think I'm sexy」(写真)なんですが、酷いことにリミックス元の音源が上記のライブなんである。歓声は全く入ってはいませんが、そういうのってありか。権利的にOKなのか。妖しいブツだ。まあ、トムは、聞いたところでOKって言うだろうが。
このスペイン人らしいDJの仕込みのヌルさが堪らないんですよ。本当に適当に四つ打ちをホイホイくっつけたような安易さだったり、「君の友だち」に勝手なスペイン語のラップを乗せちゃったり、凝ってるのか何も考えていないのか全く判らない謎の仕事ぶり。惰性と感性が出たり入ったり。
しかし、そういった謎の仕事にもかかわらず、ウイーンがいつもウイーンであるように、トムはトムである。「アイム・セクシー」は「アイム・セクシー」である。なにより、この「マイ・ウェイ」のチグハグさは凄すぎる。
トムの権威主義的なまでの熱唱は、ここでも全く不動であり、同時に苔むさぬ転石である。そんなの、言うまでもないじゃないか。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0009XG47G/goodasgoldstu-22