Juliet Lawson 「Boo」

hidizo2006-01-10



このタイトルでこのジャケット。
どこを切っても英国風味丸出し、知られざる女性のシンガー・ソングライター73年のアルバム。
ヤードバーズのポール・サミュエル・スミスに見いだされ、彼がA&Rを務めていたアイランドからリリースを狙ってデモを作るも失敗。代わりにEMI傘下のSovereignからデビューを果たすものの全く売れず、2作目を録音するもリリースされず消えていった、というのが経歴。
現在でもマイペースに活動中。公式のHPが英国にある。

あの時代には何故売れなかったのか全く理解に苦しむポップ名盤(個人的にこれの最たるものがケストレルの「ケストレル」だ)が存在しますが、これもその一つ。
スタックリッジに間違って加入してしまったキャロル・キングの曲作りに憧れるリタ・クーリッジとでも言ったらいいでしょうか。


フォークっぽいと言うよりはアコースティックなポップ寄りのサウンド
元トゥリーズでここではストリングスのアレンジなどを担当しているトニー・コックスや、あの魔人サックス奏者ロル・コックスヒルが参加。1曲目から電気サックスで奇妙なソロを吹きまくったりする。ステーィル・パン入りの「Only A Week Away」は、時期を考えると早いし結構異色なアレンジだったのではないかな。
で、一見普通のようで結構なねじれ方をする楽曲。ゴスペルっぽい曲が数曲有るが、さほど泥臭くないのが英国流か。
白眉は「Who is India?」。曲名からして変。殆ど無伴奏のなか、もしかしたら出鱈目なのではと思えるほど気まぐれな展開をする先の読めないメロディは、何度聞いても覚えられない。
「強烈な個性がある」というより、なんだか「普通じゃない」感じが通底している。どうやら、歌詞はかなり変らしいので、その影響か。
表情も豊かで声量も安定感もあるクセのない声は魅力的だ。しかし、この声と歌の普通さがインパクトを弱めた可能性はある。この声がもっと素っ頓狂だったら、曲の個性と相まって後のケイト・ブッシュ的なものという捉えられ方をしたかも知れない。


とにかく、この妙に足りない感じで、かえって満ち足りた気分にさせてくれるのが英国ポップの妙味か。
今まで名前が出てきたケストレル、スタックリッジ、トゥリーズ、キャラヴァンあたりにピンと来るひとは聞いて絶対に損はしないと思う。それらのバンドのサウンドに、穏やかな女性ヴォーカルが乗ってる訳で魅力倍増ですわ。


2005年に、マスターからダイレクトにリマスタリングされたそうで、奥行きのある音が心地よい。
最後に、サミュエル・スミスのもとで作ったデモが5曲入っていて、このフォークのような素朴な弾き語りがまたいい。流石に音はよれてますが、いいおまけです。

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