wheat 「per second,per second,per second... every second」

hidizo2006-01-18



もうリリースされて2年ぐらい経つが、聴き飽きないどころかこればっかり聴いている1枚をご紹介したい。

ウィート。「小麦」って名前を付けるセンスって何とも言えないが、アメリカ/マサーチュ−セッツの3人組だ。
このアルバムが彼等のメジャー・デビュー作で、先行して2枚のアルバムをインディーで出している。2ndの「Hope and Adams」に引き続き、現在彼の手にかかれば間違いなしの名匠デイヴ・フリッドマンがプロデュースを手がけている。前作までは、フリッドマンらしい、結構豪快にギターが鳴るセバドーみたいな歌ものカレッジ・ロック、いわゆる世間一般で言う「オルタナ」というイメージに近い風情のバンドだった。


しかし本作はどうだ。アコギの軽快なストロークが引っ張る1曲目「I met a girl」に代表されるように、サウンドはクリアーで明確。きっちりと鳴ってはいるけれど喧しくないギター、鳴りのいいベース、音の隙間を生かした元気の良いドラム。絶妙にヴォーカルにかかったリバーヴ。フリッドマン印はあちこちに見えるが、サイケ的なよどみとも爆音とも無縁。
前作から徹底的に変わったのが曲作り。ビッグ・ロック的といってもいい、とても分かり易く2度も聴けばサビが口ずさめるようなキャッチーな曲ばかり。
そのクオリティの高さはちょっと同世代のバンドでは比肩しようがないくらいだ。特に「I Met A Girl」「Life Still Applies」あたりは年に数曲出会えるか否かの名曲なんじゃないかな。
スコット・ラヴスキューの、線の細い青臭く胸を焦がす歌が何と言ってもいい。ロバート・スミス的な部分もある彼の典型的な文系声の存在感は結構大きく、切なさを増大させてることは間違いない。
で、結果として、典型的な青春アメリカン・ロック、いわばグーグードールズあたりに近いといってもいい思いっきり突き抜けたサウンドになったと言えるだろう。
捨て曲皆無、12曲があっという間に終わってしまう。

しかし、最近よくあることなんだが、前作はP-vineがライセンスをとって日本盤を出していたが、本作はソニーであるが故に日本盤が出ないままだった。最近、インディーのバンドがメジャーと契約したがために日本盤が出なくなる、と言うことが多い。ほぼ全カタログが日本盤で手に入っていたラムチョップとかもそうだし。
ですので、彼等がもっとアメリカでガッツリ売れて日本盤が出るといいなあ、というかブレイクするのは時間の問題だろう!なんたってこれだけ良い曲揃いのアルバムなんてそう無いわけだし。個人的にはジミー・イート・ザ・ワールドの「ブリード・アメリカン」より上だと思いますよ。


とか思っていたら、一昨年の秋、これをリリースした後、解散してしまった。
ギタリストのリッキー・ブレナンが既に次のバンドを始動させているらしい。
残念だけど、そのアルバムが出てくるまで、私はおそらく本作を全く飽きずに聴けて居るんじゃないだろうか。
この中に込められた計り知れない蒼さは、どこか照れくさいけれど、決して枯れそうにもない。


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