Andy Davis 「Clevedon Pier」

hidizo2006-03-30



ちょっと前に書いたジェイムズ・ウォーレンのスタックリッジ〜コーギスを通しての相棒、アンディ・ディヴィスのソロ・アルバム。
新作ではなくて、89年に作られたものの、アメリカのRelivity(スティーヴ・ハウの「タービュランス」などの諸作をリリースしていた)からリリースされたのみで、本国では今回のAngel's Airからのリイシューで初登場ということになる。
プロデューサーがXTC等でもお馴染みのディヴィッド・ロードというのが、なんとも時代を感じさせる。


幕開けに配された「Women of Ireland」は、映画「バリー・リンドン」で使われたショーン・オ・リアダの曲を彼がアレンジしたもの。時代を反映してか、当時そこそこ流行っていたヤニーとか喜多郎などのニューエイジものっぽい匂いがあるものの、単にセンチなメロディがシンセと共に描かれるだけではない、彼のギターやスチュワート・ゴードンのヴァイオリンなどの生楽器の巧みな配置が、本物っぽい手触りを感じさせる。
全体に、こういうトーンの作品が多く並ぶ。シンセ+人力の手触りで有機的な作品を作る発想は、コーギスからの流れを感じさせるもの。エレポップのようでエレポップじゃない、あの雰囲気だ。実際、コーギスの最終作「ダム・ウェイター」のメロウなタイプの曲を思わせるものも少なくない。
尚、この曲は彼がティアーズ・フォー・フィアーズのサポート・メンバーだった「シーズ・オブ・ラヴ」のツアーで、バンドの出囃子に使われていたらしい。本国でリリースが無かったのは皮肉な話だ。


全体の半分以上がインストで、ニューエイジ風もあれば、ビル・ネルソン的なシビアな反復ノリの曲もあって多彩。ですが、何より嬉しいのはたった数曲ではありますが彼のヴォーカル曲の存在だ。スタックリッジ時代以上に枯れた味わい。ちょっとニール・イネスを思わせる所もある、典型的な英国風の中音域が際だつ、まったりした声質は味わい深い。
思えば彼とウォーレンの対比は、スーパートランプで言うところのロジャー・ホッジソンとリチャード・ディヴィスの関係に近い。方や特徴的で完璧なピッチを誇るハイ・トーンの声。そして一方はまったりした中音域で特徴は薄いものの、極めて人間的で暖かみのある声。交互にその声が置かれることによって、バンドの雰囲気が豊かになっていたのだな、ということを思い出す。


地味ですが、確実な手応えの10曲。2曲のボーナス・トラックを追加。本編より若干明るくポップなのがまた嬉しいヴォーカル曲と同様のニューエイジ風のインスト。蛇足じゃない。
ジェイムズ・ウォーレンのアルバムが晴れた日に呑気に聴きたいなら、こっちは夜にしみじみ、ちっちゃめのヴォリュームで聴きたい。そんな愛すべき小品です。


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