高田渡高田漣 「27/03/03」

hidizo2006-04-11



このライブは是非皆さんに聞いて頂きたい。
こういうことを言うのも何ですが、別に買わなくても良いから聞いて頂きたい(メーカーに人には申し訳ないけど)。そういう気持ちで一杯だ。

このライブでの渡さんは、本当に非の打ち所がない。
そんな状態の歌と演奏が、クリアな音質で残ってしまったのだ。だいたい、名人芸の領域を超えた曲間のぼやきMCまでこんなにはっきりたっぷり聞き取れる音源が他にあるか?

漣さんのバックアップにも微塵の隙もない。この二人のみで描かれる世界は、他のものにも全く代え難い。これ以上、何も足す必要も引く必要もない。渡さんのライブ盤に必要なのはこの圧倒的な空気感だったのだ、と今にして思う。
私見だが「ベストライブ」や「タカダワタル的」のサウンドトラックや各種のコンサートのオムニバス盤でも殆ど立ち上がってこないこの空気。それは本人の歌への没頭とクールさと飲酒その他による遮断、そのバランスだろう。極めて絶妙。
完璧、とはこういうのを言うのだ。

こういうことを書くと、彼の歌や演奏を聞き慣れた人が「渡の真価はこんなもんじゃないよ」的な発言が飛んできそうだが。
でも、「多くの人が聞ける状態にある演奏ではこれは極上の部類じゃないですか」と胸を張って言い返せる。

実は、エイヴェックス・イオから、初期の渡さんのアンソロジーが出ていて、それと混同しているひとも居たりしてややこしい。あれも愛のある編集で素晴らしい。
が、確かに音源としての貴重さではあちらの方が上かも知れないが、渡さんが歌い続けてきたことのひとつの到達点が、このライブ音源にはあるような気がする。なにせ、あっちにもこっちにも入ってる曲があるから、その味の違いも歴然であろう。

ですから、渡さん聞きのベテランの人にもお奨めしますが、むしろこれで彼の歌に出会って頂きたい。
凄いライブではあるが、無駄に構えて聞く必要のない極上のエンターテイメントだ。
最後の四曲の連打は強力だ。
本当に泣くぞ。泣いても知らんぞ。
っていうか泣きたい人、聞いてくれ。
そして泣いてくれ。

失われたものの大きさを、時々噛みしめるくらいいいじゃないか。

あと、鈴木慶一さんの帯の文章が素晴らしすぎる。
絶対に保管すべきです。

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