Mystery Jets 「Making Dens」

hidizo2006-04-13



遂に出た、と思う人がどれだけ居るのか判りませんが、私にとっては本当に待って待って待って待って待って出た、という感じのデビュー・アルバム!既に4枚のシングルを出していたので、大変な待望感があった。
英国の有望新人、ミステリー・ジェッツのアルバム。
レーベルはフューチャヘッヅと同じ679。昨年のカーザー・チーフス同様、アルバムリリース前にすでにフジロックの出演がコールされている。また、NME主宰のNMEツアーズでも、アークティック・モンキーズマキシモ・パークと共に出演が決まるなど、あからさまに盛り上げようとしてる感はある。

基本的には、ゴーキーズ・ザイコティック・マンキ〜コーラルの流れを汲む温故知新で歪み混入型のサイケ。
どんよりした質感はあるのだが、コーラルなどよりはもう少しポップで、ヴィンテージなサイケ感は薄い。サウンドよりは歌に力点が置かれていて、昨年の大量増加のポップ・バンドの流れの中で語っても無茶ではない。曲によってはマキシモ・パーク的なシャープさもあるし。歌にちょっとデヴィッド・バーンっぽい頓狂さがあるのが、最近っぽいのかもしれない。
いわば、デューク・オブ・ストラスフィアがXTCという変名でアルバムを出してるようなモンだ。そういう屈折感は確実にある。

当初、彼らのHPをみても情報が極端に少なく、その素性はよく判らなかった。
なにせ、シングルを出すごとにただ一ページ分の表記が変わるだけだったし。かと思えば、ダウンロードのフリー・シングルがいきなり現れたり(最近は逆に凝りまくった作りで楽しいです)。

で、最近判ったこと。キーボード&ヴォーカルのブレーンとギターのヘンリーという同じハリスン姓のメンバーが二人居るから、兄弟かと思ったら親子らしい。
上のアルバムのジャケットの写真の右から2番目の白髪の人物が親父、そしてその二人左にいるちょい長髪気味のが息子だ(小さくて見にくいですが)。これはやっぱりいろんな所でいの一番の話題になっているらしい。
ただ別に親父がリーダーって訳でもないらしいけど、ライブのレポートを観ると、バンドの軸は確実のこの親子らしい。
ポール・ウエラーの再ブレイク頃に初めて聞いたのですが、リアルタイムじゃないのに60〜70年代的なサウンドを作るバンドに対し、英国では「Dad Rock」という微妙な呼び方をするらしい。そういう点で彼らも「Dad Rock」なんですが、本当にDadが居るから仕方がない。筋金入り、ってことだ。

3枚のシングルを収録したアルバムの出来は流石。その際だつポップな曲群の合間に、かなり渋い作りのバラードが。作風の幅は広いが、やりたい放題やってると言うよりは方向をしっかり見据えたバンドとしての枠をきっちり作って落とし込むような周到さがある。
アルバムのハイライトは8曲目の「Zootime」という曲だろう。ヘヴィなベースと破れかぶれの太鼓、闇雲に走るシンセとノイズ、リバーブまみれのギター、シンガロングを狙ったような「Zootime」の連呼。思いつきとしか思えないイタリアン・プログレ張りの適当かつ奇っ怪な展開。なのにポップ。得体の知れない感じを見事に発揮している。アルバムで一番浮いた曲でありながら、彼らがどんなバンドかこれを聴けば一発で判る。

ライブを収録したシングルを聞く限り、なかなか高い演奏力をもち、スタジオより混沌としたムードで惹きつけてくれそうだ。フジロックでの初来日がなかなか楽しみじゃないですか。


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