Yonder Mountain String Band  「Yonder Mountain String Band 」

hidizo2006-05-28



去年のフジロックで後悔していることの一つが、ヨンダー・マウンテン・ストリング・バンドを見逃してしまったことだ。
見逃したというのは正確ではなくて彼らを余り知らなかったからです。
ずっと経って彼らの音を知って、それはそれは後悔した。ブルーグラス流れの安易なジャム・バンドとは徹底的に違うユニークで懐深い音楽性。味わい深いったらない。

3年振り、ヴァンガードへの移籍第一弾のスタジオ盤。
要所要所でライブ盤をリリースし、HPではライブのダウンロード音源を鬼のように売ってきたので、彼らを追いかけているファンにとってこのスパンは長いのか短いのか。
プロデューサーはエリオット・スミスやベック、バッドリー・ドロウン・ボーイ、最近だとジェイムズ・ブラントを手がけたトム・ロスロックがあたっている。彼の名前を見れば判るとおり、かなり歌よりの作風に徹した作りになっている。

彼らは、アコギ/バンジョー/マンドリン/ウッドベースという編成の4人組。
この4人のグルーヴのやりとりが最大の聞き所だ。
アコギががっしりリズムを刻み、バンジョーマンドリンが細かいフレーズを差し込んで加速させ、ベースが後方からグイグイとグルーヴを押し込んでくる。このどっしり構えたベースの素晴らしさには、やられます。ドラムレスでもビート感は全く不足無し。
なお、ゲストでドラムを叩いているのはあのアトラクションズのピート・トーマス。彼自身ジャックシットというカントリー・ロック・バンドのメンバーでもあるので、こっち方面の関心も強いんだろう。ファンクっぽいリズムや力強いエイトビートを彼が補強すると、まるでフーターズのような雰囲気。良いアクセントになっている。


ポイントはバンジョー。オーソドックスなフレーズを多用している筈だが、ミックスや楽曲での鳴らせ方のせいか、シーケンサーで電子音が鳴ってるような効果を生んでいる。
ギターやマンドリンなどに思いっきりディレイを効かせ、ブライアン・イーノ風のアンビエントやサイケっぽさを演出した曲もある。
ルーツをしっかりもちながら、良い具合に逸脱している。


純粋なインストは2曲。残りはヴォーカルナンバー。曲は粒ぞろい。近年のビル・フリゼールのギターのフレーズを歌にしたようなリリカルさ。結果としてシンガー・ソングライターやサザン・ロック的な質感に繋がっている。
セルフ・タイトルというのは自信の表れか。渋みよりはポップ。聞き易い逸品です。


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