The Motors  「Approred By The Motors」

hidizo2006-04-25



1作目はそこそこのヒットを記録。彼らはすぐさま次作の制作に入る。
それが「アプルーヴド・バイ・モーターズ」(78)として結実する。
何と言っても英国人なら誰もが知っているヒット曲"エアポート"である。

前作のブギーっぽいノリはどこへやら。マクマスターのシンセとピアノが歌謡曲調の甘く甘く切ない切ないベッタベタのメロディをこれでもかと垂れ流していく。とはいえ、全くエレポップ風味にならないのは、リズム隊がしっかり重めのリズムを叩き出しているからだ。
そこに、マクマスターの無骨な歌が乗ってくる。この歌メロにあんまり際だったメロディがないのがキモ。なぜなら、歌の背後でもキーボード類が甘く甘く切なく切なくメロディを吹き出し続けているからだ。この哀愁と塩辛さのバランスがなかなかのセンスであると言えよう。
そこに、英国人以外では考えられないクイーンみたいなブリッジが急に来て、物凄く甘いサビが来る。間奏はまたジェネシスみたい。歌詞も空港での離別というベタさ加減である。
一聴しただけで「何かある」類のキャッチーさ。当に歌謡曲
当然のようにするするとチャートを上昇、ついに英国で1位を記録する。


というわけで、1作目と作風が変わった。前作のギター中心の無骨なアレンジから、シンセ類を使ったよりカラフルでポップな方向性へ。
で、この人達が面白いなと思うのは、シンセを使っていながらちっともニューウエイヴ/エレポップっぽい世界に向かわなかったことだろう。寧ろより古くさく、キンクスの流れにある英国流のポップロックに堂々と向かったと言っていい。


そのハイライトが、「フォゲット・アバウト・ユー」だろう。ワクワクするイントロ。拍手手拍子な感じの軽すぎるサウンド。ウェルメイドにもほどがある100%青春ポップな歌メロ。サビの下世話さは大したものだ。最早ほとんどノリはベイシティ・ローラーズであります。
それもそのはず、後にアメリカのアイドル、レイフ・ギャレットがカバーすることになる名曲。むしろ、ガーヴェイの無骨な歌よりは、ギャレットの声の方が曲にはあってるだろうな(未聴)。
ここまで甘けりゃ文句を言うヤツの方が馬鹿だ。だいたい、狙ったってここまで身も蓋もなく、まるで一筆書きで出来たような完璧にポップなメロディは出てこないだろう。こういうのを、才能というのだ。


とにかくキャッチー極まるアルバムで、始終ポップの極点を進む。前作はメンバーの共作が大半を占めていたが、全曲に彼のクレジットがある上に、彼の単独名義の曲も数曲ある。しかも、それがおもいっきり吹っ切れたような大ポップな素晴らしい曲ばかり。彼のポップ魂が爆発した感がある。
勿論、ガーヴェイが中心になったと思わしき無骨なロックンロールも味わい深く、実に良い対比になっている。
アルバムもヒット。名実共に彼らの代表作は本作だろう。


さて、このアルバムの発表前後に、ギタリストのブラム・チャイコフスキーが自身のリーダーバンドであるブラム・チャイコフスキーズ・バトル・アックスを結成する。
一説によると、勢いに乗っている折りに別のサイド・バンドを立ち上げて、バンドのカラーをより幅広く見せようというマネージメント共々の作戦だった、とも言われている。ところが、そのままチャイコフスキーはモーターズを脱退、バンド名も「ブラム・チャイコフスキー」に縮め、自身のバンドの活動に突き進むことになる(それはまた後日別項で触れます)。それは不仲による決別ではなかった。その後のブラム・チャイコフスキーのプロデュースをガーヴェイが手がけていることからもうかがい知れよう。


ところで、今回のリイシューは英国盤のオリジナル・ジャケットに基づいている。
このアルバムのよく知られたジャケットは雨降る中を走る車のフロントガラス越しに濡れて輝く街の夜景、という類のセカンド・プレス以降の「エアポート」なノリのもの。たしかに青っ白くて貧相で決して男前とも言い難い男四人のツラよりも、そっちの抽象的な方が商業的ではありますからね。
でも今回は男ジャケに戻った(なお、海外でのリイシューCDは「空港」ジャケですが、何故か日本のヴァージン盤は「男」ジャケであった。何故?)。それが"Oi!"流なのか。
ボーナスにはライブも収録。ラフで骨太な演奏に、「フルのライブ盤を出してくれ!」という望みを抱かずには居られない。


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