その名はミャオ
あなたは経験したことがないだろうか。
レコード・ガイドなどで
「ロウなロックンロール。凄い迫力。これぞ決定的名盤。必聴」
といったレコメンドを目にし、ようやくそのレコードを手に入れる。家路の道すがら、どれだけその音が自分をぶっ飛ばしてくれるのだろうとワクワクしながら。
スピーカーから飛び出す、文字通りロウでザクザクしたギターのリフの幕開けに、胸は高鳴りすっかり昂揚。
当たりだ!格好いい!!思わず拳を胸の前でぎゅっと握りしめる。
そしていよいよヴォーカルが歌い出す。
あれ。
なんだこれ。
迫力ねえな。
適当にミャオミャオ言ってるようにしかきこえないな。
疑問を感じつつも、その「決定的名盤」の肩書きの前で、腑に落ちないまま、でっかい疑問符を抱えてしまう。
そうです。なぜかパンクやロックンロール、それも喧しくて激しいサウンドなのにヴォーカルだけはへなちょこで不明瞭にミャオミャオ言ってるだけ、というロックをあなたは一度は耳にしたことがあるはずだ。
それは得も言われぬ違和感を残すと共に、人によってはその味を大いに受け入れ、人によっては全く無かったことにして次に向かってしまう、という二つの反応を巻き起こす。
例えばジョニー・サンダース。バズコックスのピート・シェリー。元デッド・ボーイズのスティヴ・ベイターズ。
揃いも揃って、腹から声が出ていない、著しく情けなくマヌケな、ミャオミャオ言ってるだけの独特と言うには珍奇すぎる味の歌の数々。
これから語ろうと試みるのは、そっち側から見たロックのありようである。
名付けてミャオロック。
勿論造語です。