Def Leppard 「Yeah!!」

hidizo2006-06-19



やっぱり一つのバンドの手によるカバー・アルバムは面白い。
どんなTシャツを着るかってのと同じ、いわばバンドなりミュージシャンなりの思想や意思表明でありますから。ひねりまくった選曲で唸らされるのも、ある意味ファン意識丸出しで楽しげに興じてるのも、違った楽しみがあって、大好きだ。

デフ・レパードというとメタルのバンドというイメージが強いが、中心人物のエリオットとコリンに元スパーダーズ・フロム・マースのメンバーを加えた面々でミック・ロンソンのトリビュート・バンドを組んで来日までするなど、その背後にはハード・ロック以上に英国の王道のポップやグリッターなグラムの景色が浮かぶ。特に「ヒステリア」以降のアルバムの、割り切ったポップな感覚は結構好きだ。
このアルバムは2004年には完成したと言われその後お蔵入り。なぜかベスト盤に「ウォータールー・サンセット」のみがひょっこり「未発表曲」として収録された経緯がある。何で今頃?ひょっとしてレコード会社の契約が切れた消化試合か?とか邪推も。

しかし、sそれにしても馬鹿すぎるタイトルとジャケットだ。
で、収録曲は以下のように。

1. 20th Century Boy (T.Rex)
2. Rock On (デイヴィッド・エセックス、これは私の世代だとマイケル・ダミアンがカバーして全米一位にしたのを覚えている)
3. Hanging On The Telephone (ザ・ナーヴス)
4. Waterloo Sunset (キンクス)
5. Hell Raiser (スィート)
6. 10538 Overture (ELO)
7. Street Life (ロクシー・ミュージック)
8. Drive-In Saturday (ディヴィッド・ボウイ)
9. Little Bit Of Love (フリー)
10. The Golden Age Of Rock 'n' Roll (モット・ザ・フープル)
11. No Matter What (バッドフィンガー)
12. He's Gonna Step On You Again (ジョン・コンゴスっていうかあのハッピーマンデーズのカバーで有名なあれ)
13. Don't Believe A Word (シン・リジー)
14. Stay With Me (フェイセズ)


馬鹿でしょう!
基本的に有名バンドの有名曲ばっかり。
中学生のカセットをまんま自分たちで演奏し直したような、実に真っ直ぐな(そしてところどころ興味深い)選曲。
っていうか、すかんちが作りそうなカバー・アルバムだなあ、と思いましたね。バッドフィンガーとかスイートとかシン・リジーを選ぶ辺りとか。
演奏自体も、殆どヒネリなし。原曲に結構忠実だ。
ということですと本当に馬鹿なレコードね、ってことになってしまうが、各曲ごとに付けられた長めのライナーからビンビンに感じられる原曲への多大な愛が、それを覆い隠してしまうのだ。

意外なところではやっぱりELOの「10538序曲」でしょう。ロイ・ウッド在籍時のヘヴィな1曲。決して有名ではないけど、ELOに愛着がある人なら、この曲のド頭のギターのアルペジオの痺れる重さを思い起こし鳥肌が立つことでしょう。
「ステイ・ウィズ・ミー」のみヴォーカルがフィル・コリン。巧くはないけど、エリオットよりはロッドの気分が出てなかなかいい。

しかし、このアルバムで一番凄いのは、デイヴィッド・エセックスなどのロック史的には「ナシ」の一発屋ヒット曲まで取り上げてるところだろうな。
こういうのは、格好付けては出来まい。


一ヶ月早く出た外盤を買ってしまったんですが、日本盤にはストゥジーズの「サーチ&デストロイ」とトム・ペティの「アメリカン・ガール」が追加になるらしい。くそ。二つとも最も興味がある(=台無しになる可能性があるから)曲じゃないか。ということで、そっちをお奨めしておきます。


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